最近インターネットでマラソントレーニングについて調べていると、『アドバンスト・マラソントレーニング』という本が参照されていることが多く、評価も高そうだったので自分でも買って読んでみました。結果としては買って大正解。『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』と並んで自分にとってはバイブルとなりそうです。
総評
マラソンの米国代表として2度オリンピックに出場しているピート・フィッツィンジャーと、Runner’s World誌やRunning Times誌での連載を持つ、ランニング専門のライターであるスコット・ダグラスの共著で、マラソントレーニングの構成要素が運動生理学、栄養・水分補給、回復、筋トレ、テーパリングといった様々な切り口から科学的根拠に基づいてまとめられており、非常に分かりやすく、説得力のある内容となっています。科学的根拠に乏しい説や、研究はあるものの議論の余地が残る説にも言及されている点も参考になるところです。
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』が長年に渡り様々なランナーをテストして得られた大量のデータを分析し、そこから生まれた独自のVDOT理論を中心にトレーニングの目的・効果、及びメニューを明確にしている一方、『アドバンスト・マラソントレーニング』は、「なぜそのような効果があるのか」について運動生理学的にもう一歩踏み込んで解説されている印象を受けました。マラソントレーニングの理論を学ぶ教科書としてはこの2冊があれば十分でしょう。実際、マラソントレーニングについて一般論として語られている内容の原典を辿ると、ここに行きつくように思えます。
要点メモ
この本では具体的なマラソントレーニングプログラム・スケジュールに多くのページが割かれています。その通りに実行することもできますが、その背景にある考え方を理解しておくことが重要なため、要点をまとめておきたいと思います。
優れたマラソンランナーの生理学的特性
「マラソンの走力に繋がる3大要素を車に例えてみる」のエントリーで代表的な3要素を上げましたが、さらに細かくこの本では6つの要素が挙げられてます。
- 遅筋繊維の割合が高い
- LTが高い
- ミトコンドリアが多く、大きい(エネルギー生産工場が多く、大きい)
- ミトコンドリア内の酵素が活性化している(工場の生産効率が高い)
- 毛細血管密度が高い(燃料供給や代謝物除去の効率が高い)
- グリコーゲン貯蔵量が多く、脂肪の利用効率が高い
- ランニングエコノミーに優れている
- 最大酸素摂取量が高い
- 最大心拍数が高い(遺伝的に決まっている)
- 1回の拍出量が多い
- 血中ヘモグロビン量が多い
- 活動筋への血流配分が大きい
- トレーニング刺激からの回復が早い
これらの特性を改善するトレーニング
前述の生理学的に特性のうち、1.は遺伝によって決まるが、それ以外は適正なトレーニングによって改善可能。
- LTを高める
- 閾値走(1時間継続可能なペース≒ハーフ~15kmのレースペースで20分間走)
- グリコーゲン貯蔵量と脂肪利用効率を高める
- 90分以上のロング走(レースペースから10%-20%遅く)
- 総トレーニング量を増やす
- ランニングエコノミーを高める
- 時間をかけて走行距離を増やす(速筋を遅筋の性質に近づける)
- レペティション走
- 最大酸素摂取量を向上させる
- インターバル走 (5000mレースペース)
- 回復を早める
- 回復走(ジョグ)
- クールダウン
- 温冷交代浴
- マッサージ
- 睡眠
- 練習後の栄養補給
- コンプレッションウェア
- 総合的に高める
- レースペース走(ロング走のうち6割~7割の距離をレースペースで)
まとめ
この本ではトレーニングにどれぐらいの時間(距離)を費やせるかによって、トレーニングスケジュールが組まれていますが、もっとも軽いものでも、
普段の週間走行距離は64km以下であっても、マラソンの準備期間には、週88kmまでに距離を増やす意思のあるランナー向けである。
とされており、月間300km以上は走ることを前提とした、タイトルにある通り『アドバンスト』なランナー向けのメニューかと思います。確かにこのメニューをこなせれば、確実にレベルアップできると思いますが、言うは易し行うは難しで、結局のところ行動に移せるかなんですよね。理屈だけこねくりまわして、行動が伴わないというカッコ悪いことにならないよう、しっかりと実践していきたいと思います。
なお、トレーニングメニューは各自のレベルや目標に応じてアレンジするとして、上記で要点をまとめた第1章の内容はレベルに関わらず重要かと思いますので、機会があれば一読することをおすすめします。


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