マラソンランナーのための筋トレ4種類|エキセントリック・コンセントリック・アイソメトリック・プライオメトリクスの違いと使い分け

barbell, gym, squat rack, man, strength, weights, weight training, bodybuilding, workout, health, fit, strong, squat, gray health, gray fitness, gray gym, gray training, gray workout, barbell, squat rack, squat rack, squat, squat, squat, squat, squat トレーニング
Photo by 9to5strength on Pixabay

読了時間: 約10分 / 対象: 補強トレーニングを取り入れたいマラソンランナー

筋トレとして「エキセントリックが大事」「プライオをやれ」という言葉はよく聞くけれど、実際のところ何が何に効くのか、自分にはよくわかっていませんでした。

言葉として知ってはいるが、具体的な動きのイメージと効果の説明が頭の中でつながらない、という感覚です。

2025-2026シーズンから本格的に補強を取り入れるにあたって、一度きちんと整理してみることにしました。この記事はその作業の記録です。


まず「走る」ときに筋肉はどう動いているか

4種類の筋収縮を理解する前に、走動作の中で筋肉がどう使われているかを確認しておきます。

1歩の接地から蹴り出しまでを分解すると、大きく3つの局面があります。

着地(ブレーキ)
足が地面についた瞬間、体重を受け止めるために膝や足首が曲がります。この時、太もも前(大腿四頭筋)やふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)は「引き伸ばされながら力を出す」状態になっています。

姿勢維持(ロック)
体重が片脚に乗った瞬間、上体が崩れないように体幹や股関節周りが「長さを変えずに力を出し続ける」状態になっています。

蹴り出し(アクセル)
地面を蹴る局面では、筋肉が「縮みながら力を出す」状態になっています。

これが走動作の筋収縮の基本構造です。そして4種類の筋トレは、それぞれこの局面のどこかをターゲットにしています。


4種類の筋収縮とは

4種類の筋収縮:筋肉・腱・骨の動態比較

1. エキセントリック (伸張性)

筋肉が伸び、腱が縮んで耐える(吸収)

「ブレーキ」:着地衝撃に耐える局面。筋肉痛の主因。

2. アイソメトリック (等尺性)

筋肉・腱・骨の長さは不変、張力のみ(固定)

「安定」:プランクや姿勢保持に重要。

3. コンセントリック (短縮性)

筋肉が縮み、腱を引っ張る(加速)

「出力」:地面を蹴り出す局面。

4. プライオメトリクス

1. 伸張:筋肉が伸びて 腱が縮む (エネルギー蓄積)
2. 短縮:筋肉が縮んで 腱が内側に伸びる (エネルギー放出)

「反発」:腱をバネにして跳ねる。効率的な走りの核。

エキセントリック(伸張性収縮)

筋肉が伸びながら力を出す動きです。

カーフレイズ(かかと上げ)でかかとをゆっくり下ろす局面、スクワットでゆっくり腰を落とす局面がこれにあたります。

走動作では着地(ブレーキ)の局面がこれに相当します。ふくらはぎや大腿四頭筋が「ブレーキをかけながら伸びる」状態です。

特徴として、同じ動きでもコンセントリック(縮む)局面より大きな力を出せる一方、筋肉へのダメージが大きく、翌日に筋肉痛が出やすい。これがエキセントリックが「きつい補強」と感じられる理由です。

アイソメトリック(等尺性収縮)

筋肉の長さが変わらずに力を出す動きです。

プランク・ウォールシット・片脚スクワットでの静止局面がこれにあたります。関節が動かないため、インナーマッスルや体幹の安定性トレーニングとして使われることが多い種類です。

走動作では姿勢維持(ロック)の局面がこれに相当します。

コンセントリック(短縮性収縮)

筋肉が縮みながら力を出す動きです。

カーフレイズでかかとを上げる局面、スクワットで立ち上がる局面がこれです。一般的な「筋トレ」のイメージに最も近い動きです。

走動作では蹴り出し(アクセル)がこれに相当します。ただし後述しますが、コンセントリック中心の筋トレ単独ではランニングエコノミーへの効果が限定的という研究があります。

プライオメトリクス(伸張-短縮サイクル)

筋肉が素早く伸ばされた直後に縮む動きです。

正確には単一の収縮種類というより、エキセントリック→コンセントリックの素早い切り替え(SSC:ストレッチ-ショートニングサイクル)のことを指します。

ジャンプ・バウンディング・ボックスジャンプ、そしてランニングでいえば流しや速めのドリルがこれに近い刺激を与えます。

腱スティフネス(バネとしての腱の固さ、サスペンションの固さ)が弾性エネルギーを蓄え、素早く放出する能力を鍛えます。


マラソンへの効果(研究が示すこと)

4種類を整理したうえで、それぞれがマラソンパフォーマンスにどう効くかを確認します。指標はおもにランニングエコノミー(RE)、つまり同じペースで走るのに必要な酸素量を少なくて済むかと言うものです。

研究の結果は4種類個別の効果として綺麗には整理されていません。筋収縮がどのタイプかより「どの負荷設定か」「プライオメトリクスかどうか」の方が効果に影響する、というのが現時点の知見のようです。

4種類に関わらず効果があるもの:負荷の高さ

複数の研究をまとめた分析で、高負荷筋トレ(最大挙上重量の80%以上)はランニングエコノミーを有意に改善することが示されています。一方、中負荷(40〜79%)では有意な改善が確認されていません(Llanos-Lagos et al., Sports Medicine, 2024)。

収縮様式よりも「負荷の高さ」が効果を左右するということです。「ある程度の負荷でそれなりの回数」という一般的な筋トレのイメージは、ランニングエコノミー向上という観点では効率がよくないようです。

レクリエーショナルマラソンランナーを対象にした研究でも、6週間の高負荷筋トレがランニングエコノミーと最大酸素摂取速度(vVO2max)をともに改善したと報告されています(Li et al., European Journal of Sport Science, 2021)。

筋収縮のタイプ固有の効果が確認されているもの:プライオメトリクス

プライオメトリクスは、筋肉の収縮力ではなく腱の弾性エネルギーを活用する点で、高負荷筋トレとは異なる形でランニングエコノミーへの改善効果があることが確認されています。

腱スティフネスを高めることが複数の研究をまとめた分析で確認されており(Ramírez-delaCruz M et al., Sports Medicine Open, 2022)、筋肉が直接受ける衝撃を腱でバネのように吸収して、うまく推進力に変えられるようになるとのこと。

なお、ランニングエコノミーへの効果は速度域によって異なるようです。時速12km以下(5:00/km以上の遅めのペース)での改善効果が小程度確認されており、速い速度域(12km/h超)では効果が限定的という結果が出ています(Llanos-Lagos et al., Sports Medicine, 2024)。

サブ4〜サブ3.5のペース帯(5:00〜4:16/km)で走る市民ランナーにとっては、プライオメトリクスが有効なアプローチである可能性があります。

現時点では効果が確認されていないもの:アイソメトリック

アイソメトリックについては、腱スティフネスの向上やランニングエコノミー改善の可能性を示した個別の研究がいくつかあります。しかしLlanos-Lagos et al., Sports Medicine, 2024のメタ分析では有意な改善が確認されていません。

個別の研究では「可能性がある」という報告もありますが、より多くの研究をまとめて分析した結果では有意な改善が確認されていません。数が多い方の結論を優先する考え方に基づくと、現時点では「効果なし」側に軍配が上がっています。

とはいえ「効果がない」と断言するより「現時点では有意な改善が確認されていない」という表現が正確かもしれません。


4種類の整理表

種類動きのイメージ走動作での役割ランニングエコノミーへの効果エビデンスレベル
エキセントリック伸びながら力を出す着地(ブレーキ)✅ 効果あり中程度(複数研究の分析)
コンセントリック縮みながら力を出す蹴り出し(アクセル)– 収縮タイプ単独での検証なし
アイソメトリック長さを変えずに力を出す姿勢維持(ロック)△ 複数研究分析では有意差なし弱い(複数研究分析で否定的)
プライオメトリクス素早く伸ばされて縮む腱のバネ・接地効率✅ 低速域で効果あり中程度(複数研究の分析)

マラソンで足がつるとのつながり

以前の記事でフルマラソンの筋疲労を野球の継投に例えました。遅筋MU(先発陣)が枯渇すると速筋MUが早期動員され、痙攣が起きやすくなるというメカニズムです。

4種類の補強はこの文脈でいうと:

  • エキセントリック:先発・中継ぎ投手の長いイニングを投げ続ける耐久力を高める。特定の筋が早期枯渇しにくくなる
  • プライオメトリクス:「球数を減らす」効果。腱の弾性エネルギーを使って筋肉への直接負荷を軽減する
  • アイソメトリック:フォームの崩れを防ぐ「試合運び」の安定化。体幹が安定すると末梢への余計な負荷が減る
  • コンセントリック単独:効果は限定的だが、エキセントリックと組み合わせることで補助的な役割

まとめ

4種類を整理すると、マラソンランナーにとっての優先順位はこうなります。

最優先:エキセントリック系の高負荷筋トレ
着地衝撃吸収能力と腱スティフネス向上に最もエビデンスが強い。特定筋の早期枯渇を防ぐ効果が期待できる。

次点:プライオメトリクス
腱のバネを鍛え、筋肉が直接受ける負荷を軽減する。遅めのペース帯(5:00/km以上)ではランニングエコノミーへの効果が複数の研究をまとめた分析で確認されている。

補助的に:アイソメトリック
体幹安定・フォーム維持の基盤として有用。ランニングエコノミーへの直接的な効果は複数研究のまとめ分析で確認されていないが、練習負荷が高い時期の代替手段としての実用的な価値はある。

単独では非効率:コンセントリック中心の中負荷筋トレ
エキセントリックとセットで行えば意味があるが、中負荷での「とりあえず筋トレ」はランニングエコノミーへの効果が限定的。

補強で「何かが変わった感触」がある時、それはどの種類のトレーニングがどの局面に作用しているかを把握できると、次の手が打ちやすくなります。

自分の2025-2026シーズンのデータを見ながら、来シーズンはエキセントリックをさらに片脚化・重量増で追い込む予定です。結果はまたここで報告したいと思います。


※ トレーニングには個人差があります。怪我や体調に応じて無理なく取り入れてください。


関連記事

タイトルとURLをコピーしました