ピッチ走法かストライド走法か|16レースのデータで見えてきた自分への答え

調べてみた

読了時間:約8分 / 対象:タイム改善を意識し始めた中級ランナー

ピッチ走法とストライド走法、という言葉があります。

同じペースでも、細かく速く歩数を刻むか、一歩一歩の歩幅を広げて走るか。

自分はどっちのタイプなのか、どっちが向いているのか。特に攣り対策という観点でずっと気になっていたテーマです。

この記事では16レース分のデータを並べながら、今の考えを整理してみたいと思います。


ピッチと歩幅は掛け算の関係にある

ランニングのペースは、ピッチ(1分あたりの歩数)と歩幅(1歩で進む距離)の掛け算で決まります。たとえば180spmで歩幅が1.10mなら、1分で198m進む計算です。キロ5分ちょっとのペースになります。

あるペースで走ろうとした時に、ピッチを上げるか歩幅を広げるかという2つの方向があるということになりますが、一般的には前者が「ピッチ走法」、後者が「ストライド走法」と呼ばれています。


同じピッチでも、歩幅はこんなに違う

ピッチと歩幅の関係をわかりやすく示すのが「ストライドの身長比」という考え方です。歩幅を身長で割った数値で、体格の違いを超えて走法の特徴を比較できます。

自分のデータと、MGC2023の記事で野口純正氏が計測・公表しているトップ選手のデータを並べてみます。まず同じピッチ帯(180〜188spm)での比較です。

対象ピッチ歩幅身長比
著者・全盛期平均184.5spm1.296m74.9%
著者・2026板橋183.7spm1.106m63.9%
大迫傑(2020東京・日本記録)181.7spm1.849m108.8%
キプチョゲ(2018ベルリンWR)187.5spm1.850m110.8%

ピッチがほぼ同じなのに、歩幅と身長比がまるで違います。2026板橋の自分のピッチ(183.7spm)は大迫の2020東京(181.7spm)とほぼ変わらないのに、歩幅は1.106mと1.849mで、身長比は63.9%と108.8%です。

同じピッチ帯での身長比の差は、シンプルに走力の差として読むのが自然でしょう。ピッチという「回転数」は似ていても、1歩で生み出せる推進力が全然違う、ということですね。


トップ選手の身長比で走法の個性を見る

次に視点を変えて、身長比でトップ選手の走法の個性を見てみましょう。自分の同タイム帯(3:34〜3:35)のレースも並べてみました。

対象ピッチ歩幅身長比
谷口浩美・91年東京世選(2:14:57)223.7spm1.403m82.0%
設楽悠太・18年東京(2:06:11)200.5spm1.668m95.9%
キプチョゲ・18年ベルリンWR(2:01:39)187.5spm1.850m110.8%
大迫傑・20年東京日本記録(2:05:29)181.7spm1.849m108.8%
高岡寿成・02年シカゴ(2:06:16)178.5spm1.872m100.6%
著者・2023チャレンジ(3:34:21)174.1spm1.171m67.7%
著者・2024さいたま(3:35:09)173.3spm1.167m67.5%
著者・2026板橋(3:34:02)183.7spm1.106m63.9%

トップ選手を見ると、谷口浩美(82.0%)、設楽悠太(95.9%)がピッチ走法寄り、キプチョゲ(110.8%)、大迫(108.8%)がストライド走法寄り、と個性が出ていますね。

自分の3レースを見ると、同じ3:34〜3:35というタイムであっても数字が異なるのがわかります。2023〜2024はピッチ173〜174spm・身長比67〜68%のストライド寄り、2026板橋はピッチ183.7spm・身長比63.9%のピッチ寄りです。

タイムは同じでも走り方が変わっている、というのが興味深いポイントです。


16レースのデータを同じペース帯で比べてみた

自分のGarminデータをさかのぼり、前半21kmの平均値を整理してみました。前半だけに絞っているのは、後半は攣りによるペースの乱れが入るため、純粋な比較ができないからです。

4:08〜4:13/km帯(全盛期のペース)

レースピッチ歩幅身長比
2018つくば184.9spm1.280m74.0%
2019勝田184.9spm1.279m73.9%
2019静岡184.9spm1.304m75.4%
2019湘南183.5spm1.314m76.0%
2020新横浜TT183.5spm1.308m75.6%
2021新横浜TT185.5spm1.290m74.6%

4:54〜4:56/km帯(現在の主力ペース)

レースピッチ歩幅身長比
2022湘南176.0spm1.161m67.1%
2023チャレンジ東京174.1spm1.171m67.7%
2024さいたま173.3spm1.167m67.5%
2026TCR180.2spm1.120m64.7%
2026板橋183.7spm1.106m63.9%

こうしてみると、2026板橋のピッチ183.7spmというのが良い比較基準になりそうです。

まず、全盛期との比較。

全盛期はペースが45秒前後速いにもかかわらず、板橋と同等ピッチで走っていたということなので、今よりもストライド走法であったことがわかります。

次に、練習量が落ちた後の主力ペース帯(同じ4:54〜4:56/km)での比較。

2022〜2024はピッチ173〜176spmだったのが、2026年の2レースではピッチが180〜184spmまで上がっています。最近にきてピッチ走法寄りに変わりつつあるということですね。


何が変わったのか

最も明確な違いは、日常的なドリルの有無です。

全盛期の2018〜2021シーズンは、ショートインターバル走を含むスピード練習も定期的に取り入れていましたし、5000mのレースにも出場していました。オールアウトするぐらい全速力走る事が多かった一方で、足を素早く捌くというドリルは取り入れていませんでした。

足を回転させる動きに慣れないまま、スピードを出す事を重ねた結果、ガシガシ蹴るような走り方でペースを上げる癖がついてしまって、結果として歩幅で稼ぐような走りであったのだと考えています。

そうした走り方が、脚攣りの原因の一つになっているのではないかと思い、日常的に取り入れたのが2025年秋からドリルと流しです。

2026年の板橋でピッチが上がってきているのはその結果であると実感しています。

4:20/kmで実施している閾値走では190spm程度まで出ているので、このことからも回転力を上げてスピードを上げるスタイルに変わってきていると言えるでしょう。


ピッチを上げると筋肉への負荷は変わるのか

では、ピッチ走法は本当に攣り対策となるのでしょうか?

2011年に行われたHeiderscheitらの研究によると、走るペースは変えずに「ピッチ(歩数)」を今より5〜10%だけ増やすだけで、膝や腰への衝撃ダメージを減らせることがわかっています。歩幅を少し狭めることで、1歩ごとに筋肉や関節が耐えなければならない「衝撃の吸収量」が軽くなるとのことです。

この研究はもともとケガ予防を目的としたもので、脚の攣りの予防を目的としたものではありません。ただ、最新の理論では、脚が攣る原因は「筋肉へのダメージが限界を超えて、神経がパニックを起こすこと」だと考えられています。そこに「1歩あたりの衝撃を減らす」というこの研究結果を合わせると、ゴールまでの合計ダメージをうまく分散し、脚が攣るのを先延ばしにできる可能性がある。という理屈は成り立つのではないかと思っています。

まあ、これはあくまで理論上のシミュレーションに過ぎませんけどね。

ピッチ走法に変える意味はある

脚が攣るというのは複合的な要因が絡む現象で(対策まとめはこちら)、ピッチだけで解決するわけではありません。実際、ピッチを意識するようになった2025湘南以降、TCRでも板橋でも攣っています。

「これをやれば攣らなくなる」という確信はないですが、少しでも神経筋疲労の軽減につながる可能性があるならやってみる価値はある、というのが今の立場です。

というわけで「ピッチ走法かストライド走法か」という問いに対しては、「自分にとっては攣り対策としてピッチ走法」というのが今の答えとなります。


※本記事は著者の個人的な経験・データと文献調査をもとに構成しています。医学的なアドバイスではありません。体の異常を感じた場合は専門家にご相談ください。


参考文献・データ出典

Heiderscheit, B.C., Chumanov, E.S., Michalski, M.P., Wille, C.M., & Ryan, M.B. (2011). Effects of step rate manipulation on joint mechanics during running. Medicine & Science in Sports & Exercise, 43(2), 296–302. https://doi.org/10.1249/MSS.0b013e3181ebedf4

トップ選手のピッチ・ストライドデータ:野口純正「記録と数字で楽しむMGC2023 ピッチとストライドの話」(MGC公式サイト、2023年10月12日)

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