読了時間: 約10分 / 対象: インターバル練習の強度設定に迷っているマラソンランナー
CVインターバル(クリティカルベロシティ・トレーニング)とは、「30分間維持できる、ややきつい練習ペース」で行うインターバル練習です。閾値走より少し速く、Iペースよりかは遅いゾーンで、マラソン後半に必要な中間筋を集中的に鍛えられます。
「練習でちゃんと追い込んでいるのに、レースで伸びない」
そういう経験はないでしょうか。
自分の全盛期(コロナ禍直前のシーズン)がまさにそれでした。オエっとなるぐらいきついインターバルをこなし、5000mやハーフマラソンのベストを更新できたシーズンでも、フルマラソンのベストが更新できない。心肺には余裕があるのに42kmになると失速する。
そんな悩みを抱えている時に、違うアプローチが必要なのではないか、と気づかせてくれたのがCVトレーニングという考え方でした。
CVペースとは何か
Tom Schwartzの定義
CVトレーニングは、アメリカのコーチTom “Tinman” Schwartzが体系化したトレーニング方法です。
Schwartzはウィスコンシン大学ラクロス校でアシスタントコーチを務め、その後Tinman Elite(エリートランニングチーム)を設立。Drew Hunter(アメリカ代表)、Sam Parsons(ドイツ代表)など複数の選手を世界選手権標準記録突破に導いたコーチとして知られています。
Schwartzが定義するCVペース(Critical Velocity)はシンプルです。
「30分間維持できる、ややきつい練習ペース」
より具体的には「VO2maxの約90%」に相当し、スピードの観点でいうと「Tペースよりやや速く、Iペースよりやや遅い」ゾーンに位置します。
ダニエルズの強度帯との関係
ジャック・ダニエルズの強度帯に親しんでいるランナー向けに整理すると、CVはこの位置にあります。
| 強度帯 | 相当ペース(目安) | 維持可能時間 |
|---|---|---|
| Eペース(イージー) | フルペース+40秒〜1分前後 | 制限なし |
| Tペース(閾値) | ハーフペースより速く 10kmペースより遅い | 約60分 |
| CVペース | 10kmペースより速く5000mペースより遅い | 約30分 |
| Iペース(インターバル) | 5000mペース前後 | 数分 |
| Rペース(レペティション) | マイル〜1500mペース | 短距離 |
ざっくりいうと、Iペースより少し遅めといったところでしょうか。
自分の感覚的な定義
数字だけ見るとわかりにくいので、自分なりの表現を加えると:
「練習前に憂鬱にならない程度の設定」
Iペースのインターバルは、正直なところ練習日の朝から少し憂鬱です。「今日あれをやるのか」という感覚。でもCVは違います。「これぐらいなら、まあやれるな」という気持ちで出られる感覚。
Schwartzも次のように表現しています。
「CVワークアウトはそれほどきつくないが驚くほどの効果がある」
なぜCVインターバルをやるのか?
「マラソンでスピードタイプが伸び悩む理由|遅筋・速筋の違いから考える」という記事に書いたように、自分の場合
「ハーフまでのスピードに対して、フルになるとタイムが出ない。」
「心肺に余裕はあるのに、脚が持たずに攣ってしまう。」
「ロング走を積み重ねても、脚が持たずに攣ってしまう。」
といった特性があります。
何とかならないものかと色々調べた結果、自分の筋繊維筋繊維の質を変えることをターゲットとしたトーレニングを試してみようという結論に至ったわけです。
閾値走(Tペース)やインターバル走(Iペース)と比較すると以下の表のような整理になると思います。
| 項目 | 閾値走 (Tペース) | CVペース | インターバル(Iペース) |
|---|---|---|---|
| 維持可能時間 | 約60分(ハーフペースより速く、10kmペースより遅い) | 約30分(10kmペースより速く、5000mペースより遅い) | 数分(5000mペース) |
| 主な目的 | 乳酸処理能力の向上とLT(閾値)の押し上げ | 筋Type IIa(中間筋)の持久力向上 | 最大酸素摂取量(VO2Max)の向上 |
| 動員筋繊維 | 遅筋(Type I / IIa) | 中間筋(Type IIa) | 速筋(Type IIx / IIa) |
| 野球の継投に例えると | 先発投手のスタミナ底上げ(球速維持) | 中継ぎ陣のロングリリーフ強化 | 抑えの強化(出番は少ないが、守護神の「球速Up」がチーム全体に波及効果) |
閾値走は閾値走で効果を実感している練習ではありますが、今まで試したことがなかった別の刺激での練習を取り入れてみようと考えた次第です。
CVトレーニングの実践と設定ペース
基本セッション
Schwartzが推奨する代表的なワークアウトです。
セッション①(標準)
5〜7 × 1000m @ CVペース
インターバル: jog 200m(約90秒)
締め: 5 × 200m @ マイルペース(速めのストライド)
セッション②(入門)
12 × 400m @ CVペース
インターバル: 90秒ジョグ
ポイントは2つです。ひとつはインターバルが短めであること。CVペースは比較的余裕があるので、200mのジョグで十分回復できます。もうひとつは締めに速いストライドを入れること。CVだけではスピードが落ちるため、脚神経を維持する目的で短い全力走を添えます。
現在の自分の設定(VDOT乖離をどう評価するか)
「現在の走力に基づいてペースを設定する」のが大原則ですが、ここでも自分の「スピードタイプ特有のVDOTの乖離」が顔を出します。
直近の板橋City2026(3:34:02)のフルマラソンタイムをベースにすると、VDOTは約43.5となり、Tペースは4:46/km、Iペースは4:23/kmになります。
一方、直近のポイント練習ではTペース走(4:20/km)を余裕を持ってこなせており、4:20/kmはVDOT49のTペースに相当し、それに対応するIペースは3:59/kmとなります(テーブルから逆引き)。
Mペース基準とTペース基準に乖離があるというのはスピードタイプの特徴ではありますが、ここでは「30分間維持できる、ややきつい練習ペース」という定義に合わせ、Tペース(4:20/km)の実力を基準、Iペース(3:59/km)」を設定し、その間のペースとしてCVペースを設定しています。
| 参照タイム/ペース | VDOT換算 | 対応CVペース(目安) | 対応Iペース |
|---|---|---|---|
| Tペース 4:20/km | 約49 | 4:05〜4:10/km | 3:59/km |
- 典型セッション例: 5 × 1000m @ 4:08/km(jog200m回し) + 5 × 200m速め
確かにIペースを考えると少し憂鬱になりますが、4:05〜4:10/kmであれば、かなり気持ちは楽になります。
まとめ
CVトレーニングを一言で言えば、「筋繊維の質を変えることを目的とした練習」です。
吐くまで追い込む必要はありません。それどころか、追い込みすぎると無酸素運動になり、鍛えたい筋繊維(Type IIa)に十分な有酸素刺激が届かないことになります。
スピードタイプのランナーにとって、フルマラソン後半の失速や攣りの根本原因のひとつは「中継ぎ陣(Type IIa)の持久力不足」であり、CVトレーニングはそこへの直接的なアプローチになるのではないかと考えています。
筋繊維の質が変わったかどうかは直接的に検証できるものではありませんが、この練習を積み重ねることで、来シーズンのレース終盤の走りがどう変わってくるのか、またここで報告したいと思います。
※ トレーニングには個人差があります。怪我や体調に応じて無理なく取り入れてください。

