読了時間: 約5分 / 対象: 真夏も練習を続けるランナー
この記事でわかること
- 暑熱順化のあいだ、体の中で何が起きているのか
- その変化がどれくらいの速さで消えていくのか
- 暑熱順化は本来どういう目的でやるものなのか
- 夏の練習をいつやればいいのか
いやー、毎日暑い日が続きますねー。玄関を開けた瞬間に体にまとわりつくような生ぬるい空気に、日々心が折れそうになります。
こんな時期によく耳にするのが「暑熱順化」という言葉。暑さに体を慣らすという意味で使われますが、この記事では酷暑日に炎天下を走ることの意味を調べてみたいと思います。
暑熱順化とは?体の中では何が変わるのか
暑熱順化というのは、暑い環境で運動を繰り返すと数日で始まる体の変化のことらしいです。汗をかき始めるのが早くなる。汗に含まれるナトリウムの濃度が下がる。血漿量、つまり血液の液体成分が増えて、同じ強度で走ったときの心拍が下がる。深部体温の上がり方もゆるくなるのだとか。
夏のレースに出場する場合には大事な順応ですね。
ここまでは共通認識のようです。
手に入れた順化は数週間で消えていく
ただ、Daanenらのレビュー論文によると、5日以上やれば心拍と深部体温の適応は安定するらしいです。ところが暑さから離れると、1日ごとに2.5%ずつ抜けていくのだとか。順化1日分が、休み2日で帳消し。そんな見方も紹介されていました。
研究によって幅の違いはありますが、大きくは変わらないようです。
ということで、暑さに慣れた体を維持するには、一定期間暑い環境での練習を継続する必要がありそうですね。
冬のレースに向けての効果は?
では、冬のレースをメインにしている人にとってはどうでしょう?暑さへの耐性が消えたとしても、涼しい環境での走力に何か残るんじゃないか。なんとなくそんな期待をしてしまいます。構図としては高地に行って血が増えるかどうかの話と似ていますね。
これを正面から調べたのが、Mikkelsenらの実験でした。この実験では、サイクリストを二つのグループに分けました。両グループとも5週半に渡って同じ量の練習を行い、片方のグループだけ一部の練習を40℃の部屋で実施しています。
で、結果はどうだったか。暑い部屋で練習をしたグループはちゃんと暑熱順化しましたが、14℃の涼しい環境で15kmのタイムトライアルを実施したところ、どちらのグループも伸び幅は変わらなかったそうです。VO2maxにいたっては少しも改善していません。暑い部屋でがんばった分の上乗せが、どこにも出てこなかったわけですね。著者らも、涼しい環境での成績を伸ばす上で暑熱練習が通常の練習より優れていたわけではない、と結論しています。
暑熱練習で涼しい環境の成績が上がったという論文も昔からあるようですが、著者らは、そうした論文は暑さそのものより練習量や練習の中身のほうで説明がつきそうだ、と指摘しています。
この論点についてはまだ決着はついていないようですが、「夏に暑い中を走り込んだから秋に速くなった」という実感の大半は、暑さのおかげではなく走ったおかげ、というのは確かにありそうです。
暑熱順化の目的
では、暑熱順化は何のためにやるのか?その目的を改めて整理すると
- 真夏のレースに出場するために体を慣らす
- 夏でも練習を継続できる体を作る
といったところでしょうか。
前者は分かりやすいですね。真夏にレースを控えている人なら、暑熱順化は当日のパフォーマンスに直結します。
自分の場合はどちらかというと後者ですが、「よし、暑熱順化するぞ!」と意図してやるものというよりかは、日々のランニング習慣を崩さないことが、自然と暑熱順化の目的でもあり、結果にもなるものだと思っています。
夏の練習はいつやるのが良い?
これまでの話を総合すると、真夏のレースに出る人でない限り、あえて酷暑日の日中に炎天下で走る意味はなさそうです。むしろ熱中症のリスクは上がるわ、日焼けでシミは増えるわ、デメリットのほうが多い気がします。
自分の場合は冬のレースがメインなので、もっぱら早朝か夕方以降の、比較的気温が低くて、陽射しを浴びずに走れる時間帯を選んで走っています。それでも十分暑いし、自分にとっての暑熱順化の目的は十分果たせそうです。
暑熱順化といいつつ、その過程で体調を崩してしまっては本末転倒なので、くれぐれも熱中症には気をつけましょうね。
